日本レース界の事実上の開幕戦である西日本チャレンジ。最高峰のA-Eクラスを筆頭に11クラスものカテゴリーで争われる「春を告げる」レースである。私はA-M(30歳以上の部)に参加した。
3月6日に今季使用するCOLNAGO C50LighterVersion(以下C50LV)を組み上げこのレースに備え乗り込みを行った。レースまで 2週間に迫ったこの時期に新しい自転車に乗り換えるのは、練習時間を充分に取れない社会人レーサーにとってある意味『賭け』である。
その結果が吉と出るか凶と出るかはレースが教えてくれる。
組み上がったC50LVに乗った時のファースト・インプレッションは「スタンダード」性能のどこにもカドがなく、まるで乗り慣れた自転車に戻したような不思議な感覚がした。徐々にセッティングを煮詰めて行くと、その突出したスピードの持続力に驚かされる。いつもより過ぎ去る風景が速いように感じる。
体調は万全とは言えなかったが、その風景の流れの速さが本物なのかを確かめるべくスタートを切った。レースは逃げの決まった昨年とは違い徐々に人数が絞られて行く展開。繰り返されるアタックに少しずつ人数は減って行き8人の先頭集団でラスト1周回を告げる鐘を聞いた。広島空港内のレースコースはテクニカルな下りを含むアップダウンの激しいコース。登りで消耗した体力を素早く回復する事がキーポイントになる。ラスト1周回に入るまでに印象に残った選手は2名。その内の1名、松井選手(シマノドリンキング)はアマチュアのジロ・デ・イタリアで区間2位を獲得した事もあるベテラン選手で下りの速さには定評がある。彼の後ろについて2番手で長い下りに入る。最後の登りに向けて体力を温存しようと努めるが、彼の下りのテクニックは非常に高く限界ギリギリまで攻める事を余儀なくされる。最後の詰めで落車する事は避けたいが、勝負に加わる為にC50LVの高い操作性に身を委ね突き進むしかない。
登りに入る前にふと後ろを確認すると後続が大きく離れている。どうやら下りで遅れたらしい。後続が追い付くのに力を使うように、そして自分自身は脚を使わぬように微妙にペースを上げる。C50LVの得意とするスピード持続力が試される。後続は追い付くのにかなり脚を使ったはず。回復する間もなく登りに入るハメになったはずだ。
そこからは松井選手のみをマークし最後の登りに入る。他の選手のアタックに乗じて松井選手を引き離したかったが逆に全てのアタックを松井選手が自力でつぶす力技をみせる。
ゴール前の直線では松井選手の途方もない加速力に引き離される。完全に離された私は逆に後続全員の格好の獲物になってしまい「全員に抜かれるのではないか?」と恐怖に陥ったが、C50のスピード持続力に助けられ誰にも抜かれずに2位でゴールラインを踏んだ。
敗れはしたものの、C50LVのポテンシャルに助けられた形で2位を獲得できた事は、「この先C50LVと戦って行きたい」と強烈に感じさせるに充分なレースだった。
本格的にシーズンインを迎え出場するレースのレベルも上がる。C50LVのポテンシャルを最大限に活かせるよう練習していきたい。
NEX-COLNAGO 中田尚志